カンヌ国際映画祭の脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した是枝監督の映画「怪物」が2023年6月2日に公開されました。
頭に強く残った予告での子どもたちの「怪物だーれだ」というフレーズ。
早く正体を知りたい!と思いながら映画を見てきました!前半は不安とイライラが募り、そしてあまりに予想外の展開へ物語は進みます。結末を迎える頃にはもはや唖然。自分が何もわかっていなかったことに気づかされます。
面白かった。
この記事では、映画「怪物」のあらすじや感想をまとめます。途中からネタバレの感想となるので見視聴の人は気をつけてくださいね。
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映画「怪物」のあらすじ|耳に残る「怪物だーれだ」の声(ネタバレなし)
映画「怪物」は子供同士のケンカをきっかけに、教師や親、子供など様々な視点から物語が進んでいく作品。
最初に、映画の概要とあらすじをまとめました!
映画の概要とあらすじ|訴える母、認めない教師、逃げる学校
タイトル | 怪物 |
上映時間 | 126分 |
公開日 | 2023年6月2日 |
監督 | 是枝裕和 |
脚本 | 坂元裕二 |
キャスト | 安藤サクラ、永山瑛太、中村獅童、高畑充希 |
第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」で有名な是枝裕和監督と、TBSドラマ「カルテット」や日テレドラマ「Mother」などの脚本を手がけた坂元裕二さんの二人がタッグを組んだ作品。
また2023年3月に亡くなってしまった坂本龍一さんが音楽を担当しています。
坂本さんの音楽活動はこの映画が最後となったようです。
2023年のカンヌ国際映画祭において、坂元裕二さんはこの映画で脚本賞を受賞しています。
参考URL:https://natalie.mu/eiga/award/cannes/2023
大きな湖のある郊外の町。
映画怪物公式サイトより
息子を愛するシングルマザー、
生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。
それは、よくある子供同士のケンカに見えた。
しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、
大事になっていく。
そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消したー。
【怪物】の正体はいったい何なのか、すごく気になりますよね。子どもたちの「怪物だーれだ」の響きが怖すぎてぞわぞわします。
「よくあるケンカに見えた」ってありますが、けっこう激しくてしょっぱなから不穏な予感しかありません。私も来年小学校に上がる娘がいますが、こんなケンカがあったら学校に訴えたくもなります。。
訴える母、認めない教師、逃げる学校。怪物は人なのか霊的なものなのか、それとも人の心に棲むものなのか。
是枝監督の作品は心を揺さぶられる映画が多いので、今回もかなり期待できます。
予告だけでも気になる点がありすぎる。
キャスト|安藤サクラさんはシングルマザー役
役者(作中の名前) | 役柄 |
---|---|
安藤サクラ(麦野早織) | 小5男児のシングルマザー |
黒川想矢(麦野湊) | 小5男児(麦野早織の息子) |
永山瑛太(保利道敏) | 湊と依里の担任教師 |
柊木陽太(星川依里) | 小5男児(星川清高の息子) |
中村獅童(星川清高) | 依里の父 |
高畑充希(鈴村広奈) | 保利の恋人 |
角田晃広(正田文昭) | 小学校の教頭 |
田中裕子(伏見真木子) | 小学校の校長 |
作中では親や教師やその恋人、子供たちといった様々な立場の役柄が登場します。
母親役の安藤サクラさんは直近の映画「ある男」(2022年11月公開)で、第46回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞しました。
その時のインタビューで涙ながらに「子育てと仕事の両立は全然できない。夫の助けがあったから何とかなった。」と話していて、旦那さんの柄本佑さんとのアイコンタクトがとても感動的でした!
安藤サクラさんは昔から好きな女優さんだし、永山瑛太さんは現在放映中のドラマ「あなたがしてくれなくても」で毎週見ているしで、とても楽しみです。
キャストが豪華すぎる!
映画「怪物」の感想|「怪物だーれだ」の犯人は?結末は?(ネタバレあり)
ここから映画「怪物」を見てみた私の感想を紹介します。ネタバレありなのでまだ映画を見ていない人は気をつけてくださいね。
湊の母(早織)から見た学校は悪でしかなかった
映画の最初は湊(みなと)の母、早織の視点で始まります。不可解なできごとばかりが続いて不安が募りました。
息子、湊の様子が明らかにおかしい。急に髪を切ったり、靴を片方失くしたり、水筒に砂が入っていたり。夜家からいなくなったと思って必死で探して見つかったと思えば、走行中の車から転げ落ちてけがをしたり。
親としては気が気じゃないですよね。「いじめ」という言葉が脳裏をよぎります。繊細な小学5年生の男の子にはなかなか単刀直入に聞けない内容でもどかしい。
挙句の果てに「自分の脳は豚の脳なんだ」と言い始める。ここでやっと早織が「誰がそんなことを言ったの?」と問い詰めます。
出てきた答えがまさかの「保利先生」。
この時点で完全に保利先生へ対して殺意とも言える怒りを感じてしまいました。だって子ども同士のいざこざかと思えばよりにもよって先生?教師なの?と。
そしてそのあとの学校の対応のひどいこと。心のこもらない形だけの謝罪。
早織がどれだけ切実にまっすぐ訴えても、誰一人としてちゃんと応えてくれませんでした。こんなことがあっていいの?と戸惑いと怒りの気持ちでいっぱいになりました。
保利先生は完全にクロだと思った。もはや憎い。
保利先生は実は普通の先生だった
湊が嵐の真っ最中に部屋から姿を消したところで、視点が保利先生に変わります。ちょうど映画の最初の火事の場面に時間が巻き戻ります。
早織に謝罪した時のような挙動不審さはなく、至って普通の先生でした。ここから「あれ??」と疑問が生まれ始めます。
早織から見える世界と保利先生から見える世界があまりに違いすぎました。
保利先生が湊に暴力をふるったのではない……?湊はなぜ保利先生のせいにした……??湊がイジメをしている……?いや、本当は星川依里(ほしかわより)が湊をイジメている……?とだんだん今までの思い込みが崩されていきます。
嵐の中、一体どこに行った?怪物ってけっきょく何??
やっとわかった本当のこと|子どもが話すことと事実が違いすぎて戸惑う
最後にやっと湊から見た世界が流れ始めます。
やっと種明かしが始まって正直ホッとしました。
星川依里は確かにクラスでいじめられていたけど、湊とは友達でした。2人だけの秘密の基地で楽しそうに遊ぶ2人。湊が急に髪を切った理由、片方の靴を星川依里に貸してあげたこと、水筒に砂が入っていた理由。いろんな謎が解けていきます。
でもなぜ湊はお母さんに本当のことを言わなかったのか。嘘をついたのか。
早織の「普通の家庭を持ってくれればそれでいいの。」という言葉はとても辛かっただろうなぁと気付きます。普通の幸せは自分には望めない、母親の期待に応えられない、母親を悲しませたくないと思って湊はきっとずっと苦しかったんだろうなと思いました。
校長先生の「誰かにしかつかめない幸せは幸せとは言わない。しょうもない。誰もが掴めるから幸せなの。」という言葉はすごくジーンときました。一番の悪に見えた校長先生も湊の前ではちゃんとした教師でした。
湊がお母さんにちゃんと話せるといいですね…。早織はきっと湊にとっての幸せを一緒に考えてくれるはずです。
でも子どもって親の知らないところで悩んでとんでもないことするんだなぁとあらためて怖くもなりました。行動の理由を推し量るのは難しすぎる。でも子どもにも親に言えない理由がある。それでも嵐の中何も言わずにあんなに危険なところに行くのは本当に危ないからやめてほしい……。
子どもの向こう見ずさは恐ろしい。ちゃんと相談してくれればよかったんだけどそれもできなかったんだよね。
「怪物だーれだ」の犯人は?予想外の結末には唖然としたけど面白かった!
映画を見る前に気になっていた「怪物だーれだ」のフレーズ。正体は一体?と気になって映画を見ましたが、そもそも怪物は誰なのかを探す映画ではなかったように感じました。
「怪物だーれだ」は湊と星川依里が2人で遊んだゲームの中のフレーズでした。誰もが怪物になりえたし、誰も怪物ではなかった。
豚の脳を移植された人間が怪物なのか?いや、自分の子どもに豚の脳だと言う親のほうが怪物に思えました。確実に言えるのは、子どもに自分が怪物なんて思わせることは絶対にあってはならない。
自分がこうだと思い込んでいることも、別の角度から見ると全然違うことがある。というか世の中そんなことばかり。分かってはいても、どうしても自分から見える世界が全てだと思ってしまうなぁ……といろんなことを考えさせられる映画でした。
結末に関しては見た人によって感じ方は全然違うだろうなと感じたので、いろんな見方ができるという点でもおもしろかったです。
私が個人的に思ったのは、嵐が過ぎ去ったあとの晴れた空と2人の映像だったということは、嵐が過ぎ去るまで2人は見つからなかったということ……?母の立場としては心配すぎて勘弁してほしいよ……という気持ちでした。
全てを失った保利先生が最後の最後で気付いて、湊に一生懸命謝っていたのは誠実だったなということ。子どもに対しても学校に対しても一生懸命向き合おうとしていた早織。まさか息子の嘘で先生の将来を奪ってしまったって知ったらだいぶショックだろうな……。
終わってからもいろんな考えが渦巻いて止まらない。
映画「怪物」を見た人の口コミ・評判「驚き」「子役がすごい」「残酷で美しい」
SNSで見つけた映画「怪物」を見た人の口コミ・評判を紹介します。
- そういうことだったのかと驚いた
- 子役の演出がすごい
- 良い意味で裏切られた
- 残酷で優しく美しい
- 人生で忘れられない作品だった
映画に圧倒されたという高評価が多かったです。具体的な口コミを紹介していきますね。
そういうことだったのかと驚いた
6/2公開『#怪物』試写。ちょっと…これは、すごすぎた…。間違いなく『誰も知らない』と同様に子役2人がずっと語り継がれる作品。各シーンごとに“怪物だーれだ”と問いかけてくる精緻な脚本力に否が応でも引き摺り込まれる。“そういう”ことだったのかという驚き。なるべく情報を入れずに観てほしい。 pic.twitter.com/zayqYoaxE3
— 葦見川和哉 (@kazuya_movie) May 27, 2023
映画を見て驚きを感じた人も多いですよね。私も「そういうことだったのか」と驚いたと同時に感服でした。怪物の正体が気になるところですが、事前情報はなしで映画を見るのがやはり一番です。
子役の演出がすごい
映画『怪物』
— いしいそうたろう (@ishiidesuga) June 2, 2023
是枝監督は、やはり子どもを撮る最高峰。
マジでどうやって演出しているんだ
?これはドキュメンタリーか?と思うくらい、子どもがそこにいる。
物語は、とにかく考えさせるし、考え続けなきゃいけない。そう思わせる坂元脚本も最高。
出てる俳優さんも坂本龍一音楽も一級品。#怪物 pic.twitter.com/Z4RdofjRep
2人の子役がすごかった!と大絶賛の口コミも多かったです。
本当にリアルで素晴らしかったです。わざとらしさは一切なく、子ども特有の危うさや怖さ、そして優しさを感じました。どんどん成長してちょうど反抗期が始まる繊細な小学校5年生のリアルでした。
良い意味で裏切られた
映画、怪物 観た。予告で思ってた映画とは見事にミスリードされて良い意味で裏切られて面白かった。要するに一面的に物事を見てると本質はわからないというテーマ。最後まで見入ってしまった。 pic.twitter.com/bP5XHPDphW
— 奥 浩哉 (@hiroya_oku) June 2, 2023
予告には完全に騙されました感はあります。でも、たしかに良い意味で裏切られて面白かった!
残酷で優しく美しい
『怪物』
— ippei (@ippei0823) June 4, 2023
凄い。残酷で優しく美しい。文句なしの傑作。皆ただ誰かを守ろうとしてるだけなのに、視点の違いで皆が怪物に思えてしまう…誰も悪くないのにな。「幸せになれないとバレてしまう」彼の言葉が重い。普通って何?幸せとは?ずっと考えてる。光の方へ駆け出していく2人の美しさが頭から離れない pic.twitter.com/vMIl7acCzk
ただ誰かを守ろうとしているだけなのに、みんなが怪物に見えてしまう。でもちゃんとその人の視点で見ると悪いことをしているわけではなくて。
不器用に生きていくしかない、もがき続けるしかない。残酷だけど美しい話でした。
最後のシーンも良かったよね。
人生で忘れられない作品だった
怪物、正直ぼこぼこに殴られたくらいの感覚。体感3時間以上あったし、最後の最後のシーンまで呼吸せずに観ていたんじゃないかと思う疲労感。勘違いじゃなく、劇場出る人皆んな足取り重かった。人生で忘れられない作品にいくつ出会えるのか。私にとって、この映画は間違いなくそれと思う。 pic.twitter.com/YPMYWvcOmu
— 瞳 (@___hii07) June 3, 2023
ぼこぼこに殴られたくらいの衝撃を受けた人も。
たしかに、見ていて楽しいというよりは見ていてすごく疲れる映画でした。でもずっと心のどこかに何かが残る。
私も自分の娘が成長する過程で何度も怪物の映画のことを思い出すと思います。
映画怪物のあらすじと感想まとめ|「怪物だーれだ」の答えはなんだったんだろう
映画「怪物」のあらすじと感想をまとめました。
「怪物だーれだ」の正体は映画を見ても正直明確な答えがわかりませんでした。
自分の思い込みを気持ちいいくらいに裏切られる映画で、そして面白かったです。他の人はどんな風に感じたんだろう??
映画ノベライズの文庫本も発売されていて早速Amazonでポチっとしてしまいました。まだ映画の余韻が残っていて疑問もたくさんなのでじっくり読んでみようと思います^^
※映画「怪物」は原作はなく、完全オリジナル作品。こちらは映画ノベライズです。
(追記)本読み終わりました。映画を見て、「?」と思った部分が全てつながりました。もう一度映画を見直したくなりました。湊の心の動きや星川依里の置かれた状況を把握するのは本当に難しかった。
感想などあればコメントください^^